食品表示の保存方法の欄に書いてある「常温で保管」、「高温多湿を避けて」などの言葉を見かけることがあると思います。
季節によっても変わってしまうし、具体的な温度は何℃なのだろう?
と思ったことはありませんか?
この記事ではそんな疑問に答えていきます。
常温で保存の定義、温度帯
結論としては、”常温”の範囲を示す具体的で明確な定義はありません。
ですが、”常温で保存”と指定された食品は、15~25℃程度を常温と捉えて保存するのがよいと考えることができます。
また、保存中に直射日光が当たることは避けるのが望ましいです。
加工食品の保存温度の定義ではないのですが、参考となる定義はあります。
その定義、食品メーカーの見解、細菌の増殖の観点から、常温の保存温度について考えてみましょう。
常温で保存に関して参考となる定義
加工食品の保存温度の定義ではないのですが、参考となる定義はあります。次の4つを紹介します。
- 第9版 食品添加物公定書 A通則
- 日本産業規格(JIS規格)試験場所の標準状態
- 大量調理施設衛生管理マニュアル
- 第十八改正日本薬局方
です。
第9版 食品添加物公定書 A通則
厚生労働省の”第9版 食品添加物公定書 A通則”に、添加物の試験に関しての記載ですが、常温は15~25℃と書かれています。
試験
参考:厚生労働省 消費者庁 ”第9版 食品添加物公定書 A通則”
12.標準温度は20℃、常温は15~25℃、室温は1~30℃、微温は30~40℃とする。冷所は、別に規定
するもののほか、1~15℃の場所とする。冷水は10℃以下、微温湯は30~40℃、温湯は60~70℃、
熱湯は約100℃の水とする。加温するとは、別に規定するもののほか、60~70℃に熱することである。
JIS規格
”日本産業規格(JIS規格)試験場所の標準状態”には、常温は5~35℃の温度範囲と設定されています。
45~85%の湿度範囲を常湿という、と書かれており、多湿とは85%を超えない湿度といえると考えられます。
大量調理施設衛生管理マニュアル
”大量調理施設衛生管理マニュアル”は、給食施設等での食中毒を予防するために、厚生労働省が示した調理過程での管理事項です。
「高温多湿を避けること。25℃以下、湿度80%以下に保つことが望ましい。」と書かれていますで、高温多湿でない状態は、25℃以下、湿度80%以下であることが考えられます。
(2) 施設設備の管理
大量調理施設衛生管理マニュアル
⑤ 施設は十分な換気を行い、高温多湿を避けること。調理場は湿度80%以下、
温度は25℃以下に保つことが望ましい。
温度と湿度が高いと微生物の増殖が進行しやすくなるので、衛生的な観点から調理場の温度は25℃以下に保つことが望ましいと示しているわけです。
こちらは食品の保管温度ではなく、調理場の温度を示したものではありますが、一つの参考になるでしょう。
第十八改正日本薬局方
厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書です。
”日本薬局方”では、常温を15~25℃と定めています。
通則
参考:厚生労働省 ”第十八改正日本薬局方”
16 試験又は貯蔵に用いる温度は,原則として,具体的な数値で記載する.ただし,以下の記述を用いることができる.標準温度は20℃,常温は15 ~ 25℃,室温は1 ~ 30℃,微温は30 ~ 40℃とする.冷所は,別に規定するもののほか,1 ~ 15℃の場所とする.
食品メーカーの見解
加工食品の保存温度として、常温を定義した法律や規範は見当たらず、各食品メーカーでは上記の定義を参考にしたり、メーカー内での知見から、常温を設定することが多いでしょう。
カゴメ株式会社の例
カゴメ株式会社は、トマトジュース等の野菜・果物ジュース、ケチャップやソース等の調味料などを製造する食品メーカーです。日本を代表する大手食品メーカーで、どこにいってもカゴメの食品は目にしますよね。
カゴメ株式会社のWEBサイトに、よくある質問として、
「常温とはどのくらいの温度ですか?」
という質問の記載がありました。その回答としては、
「JIS規格を参考にして28℃を常温としている」
となっています。
Q 常温とはどのくらいの温度ですか?
当社では、JIS規格を参考に、常温の設定温度を28℃としています。夏季は気温が30℃以上になる場合もありますが、常温保存が可能な商品の場合、住居内の保存であれば品質的な問題はありません。商品の味や色、香りが劣化する場合がありますので、直射日光の当たる場所や、密閉されていて著しく高温になる場所に数日間にわたって保存することは避けてください。
出典:カゴメ株式会社 WEBサイト
また、食品メーカーでの私の経験では、常温商品が賞味期限の間、日持ちするかどうかを試験するときには、25℃か30℃で保管することが多いです。
これは、常温は高くても25℃や30℃という設定で試験をするということです。
30℃で保管することのほうが多いのですが、30℃で賞味期限より長い期間保存をして、細菌が増殖していないかどうか、味に劣化がないかなどの検査をします。
その結果、問題が無ければ、その賞味期限をつけることができるものとします。
細菌の種類によっても変わりますが、基本的に細菌は温度が低いほうが、あまり活動しなくなりますが、30~40℃になるととくに活発に増殖するようになります。
10℃以下の冷蔵温度帯になるとあまり増殖もしなくなります。冷蔵庫に食品を保管していると腐りにくいのはそのためです。
30℃を超えてしまうと細菌の増殖がより活発になるわけですから、保存温度は30℃は超えないほうが望ましいでしょう。
また、10℃以下は冷蔵温度帯となり、常温とは呼ばなくなります。
その間の15~25℃が、常温の保存温度として適していると考えることができます。
常温で保存の食品は何度で保存すればよいか
「高温多湿を避けて、常温で保存」を明確に示すことはできませんが、次の内容を参考にして保存してください。
- 直射日光を当てないようにする
- 15~25℃を目安にする
- 湿度80℃以下にする
まず、直射日光を当てると食品が温まってしまいますから、直射日光に当てないことです。
細菌の増殖の観点からは30℃を超えないのが望ましく、10℃以下になると常温ではなくて冷蔵ということになりますから、その間の15~25℃で保存をすること。
湿度は”大量調理施設衛生管理マニュアル”に書かれているように多湿となる80%以下にすることが望ましいでしょう。
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